| 現 況 |
改修計画立案 |
改修再生工事開始 |
工 事 完 了 |
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現地調査当日、近年にない大雪に見舞われた。 建物は昭和2年竣工、築80年の農家住宅で、典型的な田の字プラン。 黒光りした通し柱や差し鴨居、鏡板戸や簀戸が圧倒的な迫力で我々を迎えた。予想通りの差鴨居通し貫工法とも言える伝統工法である。最近、このような家屋を均一とも言える住宅に建替える方が多い。なんとも、もったいない限りである。すばらしい空間にリニューアルするぞ、と寒さも忘れて現地調査に力が入った。当時、土間と吹抜けがあった部屋は昭和中期に床を張り、天井を張り、普通の部屋に改装されていた。 |
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左写真:太い柱と差し鴨居で構成された軸組 右写真:玄関ホールにあった簀戸と鏡板戸 |
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左写真:竣工当時、土間のあった部屋 昭和中期に改修され床、天井が張られた。生活スタイルの変遷とともに冬季の暖房効率等考えられた結果である。 右写真:竣工当時からある水屋 修理を施せば現代でも十分通用する家具に生まれ変わると直感。 |
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左写真:急勾配の箱階段 右写真:2階の寝室、天井高さ2.2m 竣工当時2階の内装工事は未実施だったが、昭和中期の改修で内装工事が行なわれた。小屋組みの梁を隠す高さに天井を張ったためか、かなり天井が低い印象を受けた。 |
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小屋裏をのぞくと、こんなにすばらしい丸太梁があらわれた。 「ちょんな」と呼ばれる大工道具で削れ出された梁。昔の家屋の天井裏には、こういった梁が隠れている場合がある。 |
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現況玄関 玄関庇を鉄骨の柱で受けている。 | ||
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玄関庇の現況 昔の家屋の屋根は土を載せて瓦を葺いている。このお家は庇の出が通常より深いため、雪による損傷を受けていた。たる木が折れ、折れた部分には追加のたる木を差込み補強してあった。 | ||
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建物妻面現況 伝統家屋の特徴を一番に表す妻壁の三角部分。長年の風雪から木材、壁面を守るため、トタン板が張られていた。 | ||
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現地調査の結果をもとに改修計画を立案。 お施主様との打合せで昔、囲炉裏のあった土間の部屋をダイニングキッチンとリビングにすることに。 当時は天井無しで小屋組みが表しになっていたはず。天井裏を調査すると、囲炉裏の煙でいぶされて、すすまみれになった小屋梁材が確認出来た。 その小屋組みを表して吹き抜けの大広間、今回改修の目玉の部屋とすることに。1階の改修に予算の多くを割き、2階は家族の個人部屋と割り切り、石膏ボードとクロスで安く仕上げること。床下の腐朽した部分や柱を補強する事、外壁の張り替え、妻壁は漆喰で化粧する事などを提案した。 基本設計、実施設計、建設業者への見積依頼、業者決定と進み、やっと改修工事に着手するところまで漕ぎ着けた。 |
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まず、再生使用する建具や水屋を運び出した上で、既存の天井板や壁、床材、建具、古くなった畳などを撤去する。当日は大工さんをはじめ、家族総出の作業となった。天井裏には長年の埃が約5センチ堆積していて、埃との格闘でもある。写真を撮っている時間も無いままに、改修する部分が露出され、いよいよ再生工事の開始となった。 |
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ダイニングキッチンとリビングになる部屋は吹抜けになるため、部屋の内部に足場を組んで埃だらけの小屋組み木材を磨き上げて行く。 | |
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上部の小屋梁は磨き上げ完了。 段々下の方へ磨き工事が進行していく。小屋組みの全貌が明らかになってきた。野地板、たる木の部分は断熱材を入れボード張りとしてシックイクロスで仕上げる予定。 |
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木材の磨き上げが完了したら、次は壁のシックイ塗りである。竣工当初からある土壁と木材に出来た隙間を土塗りで補修したのち、シックイを塗り重ねて行く。 木材は生きている、80年の歳月は木材の伸縮を完結させている。伸縮によって隙間の出来た部分に土を詰めれば、安定した土壁になるのである。 |
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左官工事と野地板部分のシックイクロス仕上げが完成し足場を解体。 妻壁にあかり採りの小窓を新設した。部屋上下の温度差を解消するため、シーリングフアンを梁に設置。照明器具は汚れ防止でまだ取り付けていない。 |
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2階書斎からリビングを見下ろせる障子を新設。 吹抜け上部にたまる熱い空気を自然換気で循環させるためにも重要な小窓でもある。 既存の柱間に化粧貫きを新設。シックイ壁と柱と貫き材をリズミカルに演出した。 |
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ダイニングには最新型のシステムキッチンを導入した。オール電化でIHコンロを使用する。手前の台には炊飯器、電気ポットを収納。下部は引き出し、分別ゴミ入れを設置出来るようにしてある。 この台に接続してムク木材の大テーブルを造る。この時期、お施主様と一緒にテーブルの素材を色々な場所へ吟味しに出かけた。 |
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ダイニング、大テーブルの据付 ようやくタモ材の一枚板を探し出し、建具屋さんで加工してもらった。余った材料で茶の間の座机も作ることができた。 | ||
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2階は寝室など個人の部屋に利用。全ての部屋を左官壁にすると予算的に無理が生じるので、2階は居住性を優先し気密と断熱を心がけて大壁で仕上げる。 今まで低かった天井を30センチ上げて天井高さ2.5mに変更。小屋組みの梁が少し見える形をとった。思わぬ場所に梁が見えてきて、面白い空間が出来上がった。見える梁は1階と同様に磨き上げ、古色の色付けを行なった。 |
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1階の座敷廻りでは床下の補強、柱や差し鴨居の矯正、磨き工事が進行中。 長い月日の間に柱や梁は、木材の個々が持っている基の素性(形)に戻ろうとする。それが歪やそりの原因である。個々の材料位置に適した方法を選び、慎重に正しい位置へ矯正していく。 座敷の壁はジュラクとシックイに塗り替える。天井板は柱、梁と同様に磨き上げる。 |
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4月末になり天気も安定してきた。妻壁のトタンをめくり妻壁を修復する工事も始まった。桁行き方向の外壁、焼き杉板も新しく張り替えていく。 | ||
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六ヶ月に及ぶ工事もようやく完成をむかえた。 工期が長くなるのは、塗り壁が多いため。左官工事を行なっている時期は、同じ場所の大工工事を禁止しているのも影響した。 これは塗りたての壁に振動を与えず養生するためにとった処置。こういった注意が後々の建物の品質に大きく影響すると考えたからである。 |
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完成した妻壁外観 リズミカルな木組みを再現 写真では判別出来ないが、水平方向に施工した木材には水切り板を施してある。これにより旧の建物で弱点となっていた風雨による侵食は防ぐことが出来る。 |
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桁行き方向の外壁は、焼杉板を張り替えた。 | ||
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玄関廻り 腰壁に旧の建物にあった板張りを模した板張りを施した。玄関建具は機能を重視しアルミ建具を用いた。 | ||
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玄関ホール 正面に見える簀戸は旧の建具を磨き上げ装飾壁として加工再生した。この装飾壁の奥はリビング・ダイニング。簀戸はスノコ状に開口があるため、部屋側に5ミリのガラスをはめ込んである。 右に見える飾り棚兼下足入れは、前出のダイニングテーブルを製作した時の天板と同じ材料を用いて製作したオリジナル。 |
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リビング・ダイニング側から リビング・ダイニングの床材はオーク材の21ミリフローリングを選択。天然塗料で古色に着色した。 今回の改修工事では出来る限り天然素材にこだわった仕上げを行なっている。 |
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リビング・ダイニングに設けたテレビ台 前出の既存水屋は上下にはずせる構造だった。それぞれを再生、磨き上げ、水屋の下の部分をテレビ台として蘇らせた。水屋の上部は、茶の間の整理棚として利用することとなった。 |
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完成したリビング・ダイニングの吹抜け部 |
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1階座敷廻り 座敷廻りはジュラク壁を塗り替え、木材を磨き上げ、縁側の建具もアルミサッシに取り替えた。 |
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座敷、床の間廻り 左側は造り付けの仏壇、非常に珍しい形。内部はシックイ塗りで仕上げた。 |
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昔からあった建具も損傷を受けた部分のみ修繕を施し、磨き上げて再生利用した。このような建具を新設したら高額な代金となるはず、また製作できる建具職人さんを見つけるのも一苦労することになるだろう。 | ||
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リビング・ダイニング横の茶の間 間仕切りにある建具は今回工事で新設した。障子紙には水ぶきが出来るワーロン和紙を使用。 | ||
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2階の部屋にはこういった小屋梁が露出となり、画一化した大壁の小部屋がそれぞれ違った雰囲気を出している。 | ||
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2階書斎よりリビング・ダイニングを見下ろす。 | ||